出産費用の無償化へ

 妊産婦の支援策に関する厚生労働省の有識者検討会は、2026年度をめどに標準的な出産費用の自己負担無償化に向けた具体的な制度設計を進めるとしています。全国の正常分娩の平均出産費用は、2024年度上半期に51万8,000円程度と、10年間で9万円近く上がっています。現在は帝王切開など一部のみが公的医療保険の対象となっていますが、正常分娩は対象外で、代わりに出産育児一時金を支給する制度があります。

 出産費用は、現在それぞれの医療機関に自由な料金設定を認めています。保険適用で一律の診療報酬を設定すれば、費用の上昇に歯止めがかけられます。分娩の経過は個人差が大きく、痛みの緩和へのケアの実施状況なども医療機関によって異なります。そのため、標準的な出産費用の診療報酬の設定は困難です。また、保険適用によって3割負担が生じれば、現在よりも自己負担額が増える恐れもあります。

 麻酔を使って陣痛の痛みを和らげる無痛分娩についても意見が分かれています。保険適用を求める訴えがある一方で、習熟した産科・麻酔科医の確保や対応できる医療機関数の地域差に課題があり、時期尚早との指摘もあります。東京都は、10月から無痛分娩に最大10万円の助成を始めます。  正常分娩の平均出産費用を都道府県別にみると、東京都は2023年度に62万5,372円で、最も低い熊本県の38万8,796円と比べ1.6倍の開きがあります。保険適用をする場合、国が全国一律で出産費用の公定価格を決めることが想定されるため、経営難になる施設が増えるとして、産婦人科医の団体は強く反対しています。制度設計には時間がかかる見通しで、厚生労働省は2026年度の保険適用は難しいとしています。

(2025年5月15日 朝日新聞・日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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