出自を知る権利

提供精子による人工授精(AID)においては、現在出自を知る権利が大きな問題とクローズアップされている。わが国ではAIDは匿名で実施されており、生まれた子どもは出自を知る権利を行使できない状況にある。

諸外国では出自を知る権利が法制化されている。スウェーデンでは1984年に人口授精法で子どもに出自を知る権利を認めている。しかしながら、子どもから情報開示を求める要求は極めて少なく、親がAIDの事実を伝えていないことが予想される。また匿名で実施できる他国でAIDを受けるケースも増加している。

一方、フランスではこれまで特別な場合を除いて、AIDは完全匿名で実施されているが、最近になり相次いで出自を知る権利を求めて訴訟が起きている。フランスはAIDのドナーは無報酬を法で定める唯一の国であるが、今や再考せざるを得ない状況にある。出自を知る権利は生まれた子どもにとって極めて大切な権利の一つであり、わが国においても真摯に考えるべき時期にきている。

(吉村 やすのり)

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