出自を知る権利に関する一考察 Ⅱ
非配偶者間人工授精(AID)で子どもを生んだ両親の思い
AIDで子どもを生んだクライエントは、様々な不安や問題を抱えながら子どもと生活していることが想像されます。精子提供者のプライバシー保護のため、現時点では提供者はクライエントに対し匿名とされています。そのため、両親が子どもに対して意を決して真実告白をしたとしても、子どもは出自を知る権利を行使することはできません。
真実告知をした後の親子関係が極めて良好であっても、子どもの発育過程においては様々な状況で提供者の医学的および遺伝学的情報が必要となることがあります。その時両親はドナーの情報を知らされていないために、偽りの記述をしなければならなくなります。AIDにおいては、子どもの誕生が治療の終わりではないこと、その子どもが身体的にも精神的にも健やかに成長してくれるかどうかが大切です。AIDでの出自を知る権利は、子どもにとって重要であることは言うまでもないことですが、AIDによって子どもを持った両親にとっても大切な権利であるかもしれません。
Ⅲにつづく。
(吉村 やすのり)