3月7日(金)NHK7時のニュースで出自を知る権利についての報道があった。41年前に慶應義塾大学で非配偶者間人工授精(AID)を実施して生まれたAID児が、提供者の情報開示するよう文書で求めたとの報道であった。
当時のAIDは完全匿名で実施されており、ドナーの氏名はクライエント 夫婦にも知らせない、ドナーにも妊娠したかどうかを知らせないことを前提にしていた。以前、AIDに関しては、20年はカルテを保存していたが、40年以上前のカルテは存在していない。そのためAIDを実施したかどうかの事実すら調べることはできない。
18年程前から、精子提供者の情報、実施日、妊娠の有無、1人のドナーから生まれた子ども数などが全て台帳として保存されている。当院ではカルテはなくても提供者を特定できるようなシステムを確立している。将来生まれた子どもが出自を知る権利の行使をしたいと考えた時に備えるための措置である。しかし、現在実施しているAIDにおいては、匿名を条件にドナーが誰であるかを知らせないで実施することをクライエントとの同意の条件としているため、現時点では特別の理由がない限り判っていても知らせることはできない。
(2014年3月7日 NHK Webニュース)
(2014年3月8日 日経新聞)
(吉村 やすのり)