初任給引き上げ企業の増加

東証プライム165社のうち4割が、初任給を引き上げています。2022年4月に入社した新卒社員の初任給を引き上げた企業は、過去10年間で最高となっています。企業が初任給引き上げで若手人材の確保を急いでいます。
産業別にみると、製造業は50.5%、非製造業は30.6%の企業がそれぞれ引き上げており、特に製造業の引き上げ意欲が目立っています。前年度比伸び率が主要1,720社中トップだったのが日本郵船で、4万200円(18.7%)増の25万5,000円です。NECは、大卒社員で1万円(4.6%)増の22万7,000円に引き上げています。
一方で、急速な初任給の引き上げは、その前の年以前に入社した若手社員との給与水準の逆転を招きかねません。付加価値が働く人にどれだけ分配されたかを示す日本企業の労働分配率は、2000年以降で過去最低水準にあります。企業は好業績でも、賃金原資を大きく増やしていないのが実情です。年齢別の賃金上昇カーブは一段と緩やかになっています。若手社員は初任給は上がっても、それ以降は給与が上がりにくい状況があります。
同じ会社に長く勤めても賃金が上らなければ、より高い給与を求める転職が増えると思われます。転職者の賃金カーブを調べてみると、20代後半と30代前半の転職者の賃金カーブに比べて高いことが分かっています。数年間働いてスキルなどを身につけた若手ほど、より高い給与で転職できている実態があります。初任給の上昇は日本の労働市場の人材流動化を加速させる可能性があります。

(2022年5月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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