初経教育の重要性

最近書店へ行くと家庭向けの性教育本がずらりと並んでおり、関心の高まりを感じます。性教育は、生殖にまつわることを教えるだけではありません。幼い時から「あなたの体はあなただけのもの」と伝えて育て、その延長線上で生殖器や性行為のことも科学的に学ぶのです。男女の体の差違を知ることと同時に、ジェンダー理解も性教育の柱です。
女性の月経を理解することは女性のみならず、男性の性教育にとっても大切です。女性がどのように月経と付き合えば良いのか教えるのも重要であり、そのために正しい初経教育が必要になります。海外では、初経を経験する年代になると、母親とともに産婦人科医を受診し、月経についての知識、その対処法、性行為、避妊、がん検診、HPVワクチン接種などについてのお話を伺う家庭が多くなっています。
かつて女性は、初経の訪れと同時に様々な心配事を抱えたり、運動などを諦めたりしなければなりませんでした。重い生理痛によって、男子と同じように学んだり働いたりすることを諦めた人も大勢いました。それは個人にとっても社会にとっても大きな損失でした。しかし、現在、生理用品は著しく進化し、重い生理痛も経血過多も医療で解消できるようになりました。
低用量ピルの服用により、経血量も減り、月経症も軽減されるようになってきています。また、自分のスケジュールに合わせて月経を調節できるようになってきています。最近では、ピルの連続投与によって月経を起こさない長期投与も普及してきています。現代の女性は、生涯で400~450回程度月経を経験していますが、その回数は100年前の女性に比べて、3~9倍多くの月経にさらされていることになります。それに伴い、子宮内膜症や月経困難症に苦しむ女性が増えています。その意味でも、思春期からピルを服用し、月経をコントロールすることが必要です。
高度経済成長期の女性の社会進出を陰で支えていたのが、生理用品の進化でした。生理用品の進化とともに自分にあったものを選択し、ピル服用により月経による不調をコントロールできる時代となりました。こうした情報を周知させるためにも、質の良い初経教育が不可欠です。そのためには小学生における初経教育が必要となります。現在、わが国の産婦人科医も小中学校に出向き、多くの先生方が性教育を実践されています。

(吉村 やすのり)

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