制御性T細胞の意義

 免疫細胞は、体内で病気の原因を見つけて排除する役割を担います。体の中のものを敵(非自己)と味方(自己)に分け、攻撃したり守ったりします。この仕組みを担う代表格が、白血球の一種であるT細胞で、主に3種類あります。がん細胞などを直接攻撃するT細胞、その攻撃をサポートするT細胞、さらに免疫の異常な反応に対するブレーキ役を務めるT細胞の三種です。このブレーキ役のT細胞が、制御性T細胞(Tレグ)と呼ばれます。Tレグの発見により、大阪大学の坂口志文教授がノーベル生理学・医学賞を受賞されました。

 体内に侵入したウイルスなどの異物を攻撃するT細胞は、心臓の近くの胸腺で作られます。自己の組織を誤って敵と認識する不良品のT細胞は、本来胸腺内で壊されますが、一部はすり抜けて自分の正常な細胞を攻撃したり、他の免疫細胞に攻撃を指示したりします。それにより自己免疫疾患が起こったりします。

 免疫のブレーキ役となる制御性T細胞は様々な病気に関わっています。制御性T細胞の働きを強めることで、自己免疫疾患やアレルギー、臓器移植後の拒絶反応を抑えられる可能性があります。一方で、がん細胞を攻撃する免疫細胞にまでブレーキをかけてしまい、がんを守る盾のように振る舞うことも分かってきています。逆に制御T細胞を弱めてがんを治療する研究も国内外で進んでいます。

(2025年10月7日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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