前期精子細胞を使用した顕微受精

 不妊の原因の一つで、精巣で精子がつくられない非閉塞性無精子症に対して、精子に成熟する前段階の前期精子細胞(円形精子細胞)を精巣から採取して体外受精を実施し、112名の子どもが誕生しました。セントマザー産婦人科医院の田中温院長らが実証し、その仕組みなどを米科学誌Proceedings of the National Academy of Sciencesに発表しました。前期精子細胞は、精巣内のもととなる精祖細胞が2回減数分裂してできる細胞で、成熟すると精子になります。前期精子細胞を精巣から見つけ出し、卵子に電気刺激を与えて活性化させ、精子を顕微授精をさせることにより、妊娠成立にいたりました。1996年に既にフランスで実施されていましたが、精巣内において受精能力がある前期精子細胞を見つけ出すことが困難であり、最近ではあまり実施されていませんでした。
 非閉塞性無精子症でも、非配偶者間の人工授精(AID)を実施しなくても子どもが持てるという意味では、意義ある成果であります。しかし、その子どもに対する安全性については不明点が多く、注意深い児のフォローアップが必要になります。

(吉村 やすのり)

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