労働分配率の低下

 企業の稼ぎが賃金に回っていません。利益などのうち人件費に回る割合を示す労働分配率は2024年度に53.9%となり、1973年度以来51年ぶりの低水準でした。企業の内部留保は、2024年度末の時点で636兆円と過去最高を更新しています。規模が大きい企業ほど分配率が低下しています。資本金10億円以上の大企業は36.8%と、前年度から1.3ポイント、資本金1億~10億円未満の中堅企業は59.9%で、前年度から0.7ポイントそれぞれ下がっています。1,000万~1億円未満の中小企業は70.2%で、前年度から0.1ポイント上昇しています。

 企業活動のグローバル化が分配率を構造的に引き下げている側面もあります。2024年度国際収支統計の第1次所得収支によると、日本企業の海外子会社から受け取る配当金などの直接投資収益は、25.9兆円の黒字でした。海外から来る稼ぎは、一定程度分母である企業の利益に計上される一方、国内で働く従業員が直接生み出した付加価値ではないため、分子である賃金上昇につながりにくい状況にあります。

 一方、企業が蓄積した内部留保は増え続けています。利益剰余金は2024年度末時点で636兆円で、前の年度末から1割ほど増えて過去最高を更新しています。現預金は、268兆円と過去最高だった前の年度末の272兆円から小幅に減少していますが、依然高水準にあります。内部留保はある程度は必要ですが、構造的な賃金引上げ実現への貢献が社会的に求められています。

(2025年7月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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