心筋梗塞や脳梗塞など病気のリスクを高めるのが動脈硬化です。全身に血液を巡らせる血管は、自分の健康を知る物差しになります。動脈は外側から順に外膜、中膜、内膜の3層からなります。内膜にある内皮細胞から血管収縮部質であるエンドセリンと、血管を軟らかくする一酸化窒素などが出ます。血流が増えると一酸化窒素の分泌量が増え、エンドセリンは減って、血液がスムーズに流れるようになります。年を取ると一酸化窒素が出にくくなり、血管の柔軟性を失います。血管内膜の内皮細胞が弱り、食生活の悪化などが重なるとコレステロールなどがたまって、血液の通り道が狭まり、血栓もできやすくなります。
加齢などで動脈が硬くなった状態を血管年齢と呼ぶ数値に変え、患者に分かりやすく伝えています。動脈が硬くなるのは、加齢のほか、運動や食事、喫煙習慣など日常生活の乱れも影響します。運動ではウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が効果的とされており、実際に血管年齢が下がったとする研究結果も報告されています。早歩き程度のウォーキングを1日30分以上するといいとされています。食生活では全体のカロリーを抑え、乳製品が含むラクトトリペプチドや、ウコンの主成分クルクミンなどの摂取が有効です。食塩や喫煙、肥満などは悪しき影響をもたらします。
(2016年6月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)