医学的卵子や卵巣組織の凍結

  若くしてがんにかかると、治療は成功しても、その後に子どもを持つことが難しくなることがあります。白血病や乳がんで抗がん剤や放射線を使う場合などは、男女とも精子や卵子がつくれなくなる可能性がでてきます。子どもを持ちたいという患者の意向を配慮し、治療を優先させながら将来の不妊を避けようとする取り組みがなされています。若い人に多い乳がんや白血病などでは、抗がん剤や放射線の影響で卵子が傷害を受けやすく、月経が無くなってしまうことがあります。止まった月経が治療後に再開する例もありますが、そのまま閉経になり、自然妊娠が難しくなる人もいます。
 女性の妊娠機能を保つための試みの一つが、受精卵や受精する前の未受精卵子の凍結保存です。治療前に採取し、パートナーがいる場合、より凍結に強い受精卵の状態で保存することになります。ただ卵子を採るには排卵を促す薬剤などを使うため、最低23週間程度必要となり、がんの診断後すぐに治療を始めるケ-スでは卵子を保存しておくことはできません。治療開始を遅らせることができない場合は卵巣組織の凍結を行います。腹腔鏡で手術して、患者の卵巣の一部を採取して小片にして組織のままで凍結します。がん治療を終えた患者の体内に卵巣組織を移植すれば月経が再開し、自然妊娠や体外受精が可能になります。
 胚の凍結に比べて、卵子や卵巣組織の凍結はまだ成績が良くないのが現状です。特に卵巣組織の凍結は臨床研究の段階です。また白血病などでがん細胞が卵巣に入っている可能性があると実施できないなどの制約もあります。がんの状態などから妊娠機能の温存が難しい場合もあります。このため抗がん剤の影響や年齢との関係、がんの再発リスク、生殖医療の成功率、費用など考慮しながら、実施することになります。

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。