削減や抑制が続いていた医学部の定員は、2006年より「新医師確保総合対策」で定員が増加されている。地方での医師不足などを背景に、国は08年度から定員増にかじを切り、15年度の総定員は過去最多の9,134人となる見込みである。16年春には1981年の琉球大以来となる医学部が東北医科薬科大に開設予定である。
文部科学省の学校基本調査によると、2010年度に約11万人だった国公立私立大の医学科への志願者数は、14年度には14万人を超えた。少子化に伴う学生獲得競争が激しさを増す中、近年は多くの私立大が6年間で計数百万円の学費値下げに踏み切っている。学費減そして安定志向が医学部熱を増加させているが、医師になる認識がないまま、成績だけで進学する学生も少なくない。団塊の世代は260万人以上が生まれていたが、彼らが医師を目指した時代の医学部定員は3,500名前後であった。今は130万人前後に対し、9,000名を超える医学部定員であり、今後質の低下も大きな問題となるであろう。
(2014年11月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)