医師の働き方改革

 病院の勤務医の長時間労働が常態化しています。医師が休みなく働くことは、過労死につながることだけではなく、診察でミスが増えることにつながります。2016年度の厚生労働省研究班の調査によれば、1週間あたりの勤務時間は救急が約64時間、外科系と産婦人科が約59時間半で、労働基準法が定める週40時間より20時間程度長くなっています。
 医師の働き方については、厚生労働省の検討会が報告書を公表しています。医療従事者の自己犠牲に頼ることなく、性別や年齢に関係なく多様な働き方を実現すべきだと提言しています。具体的には、医師以外の職種を含めた役割分担の推進、医師を支える新たな医療職種の創設、情報通信技術の積極的な活用、遠隔医療の推進などを挙げています。
 医師が宿直する場合、次の日も日常勤務することが通常です。しかし、最近では宿直後は午前中だけ残り、午後の勤務には入らない病院も増えています。また子育て中の女性医師には時短勤務や日中勤務(9時~17時)だけで宿直を免除している病院も都心ではみられるようになってきています。特に女性医師の多い産婦人科は、家庭を犠牲にせずに働けるような労働環境を作っていかなければなりません。そのためには、大きな病院に産科医を集める、産科施設の集約化が欠かせません。しかし地域の病院においては、医師不足のためこうした働き方改革をできる病院は僅かです。医師の労働時間短縮や時間外労働の規制は待ったなしの状態ですが、それらの議論の際には地域における医療の現状認識が必要となります。医師の長時間労働の是正と適正配置は、同じ次元で考えられなければならない問題であり、厚生労働省における様々な検討会における議論においても、地域医療を守る観点からも考慮されるべきです。

(2017年12月17日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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