医師の宿直の掛け持ちの解禁

 厚生労働省は、病院の宿直規制を緩めます。これまで病院ごとに宿直医の配置を義務付けていましたが、1人で複数の病院を担当できるようにします。夜間対応の必要人数が減れば、日中に勤務できる医師が増え、地方の病院が医療提供体制を維持できるようになります。

 医療法16条は、病院の管理者は医師を宿直させなければならないと定めています。患者の急変時に適切な治療を迅速におこなうためで、常駐が原則です。例外について、同法は①当該病院の医師が病院に隣接した場所に待機、②入院患者の病状の急変時に当該病院の医師が速やかに診療をおこなう体制を確保する場合と定めています。

 人口10万人あたりの医師数をベースに地域の人口構成などを加味した医師偏在指標によれば、最大の東京と最少の岩手は1.9倍の開きがあります。日本の1病院あたりの医師数は2022年に40.6人で、米国の148.1人やドイツの127.9人に比べると大幅に少なくなっています。2024年4月から医師の時間外労働に上限規制を設ける働き方改革が始まりました。大学病院などから派遣される医師の数が減った医療機関が全体の5%に上っています。

 厚生労働省が掛け持ちの解禁に踏み出すのは、主に2つの理由があります。一つはICTの普及です。宿直医の配置を義務づける医療法が施行された1948年とは医療を取り巻く環境が大きく変わりました。遠隔でも患者の状態や電子カルテを確認し、解熱剤の処方などを看護師に指示できます。もう一つは医師の偏在です。医師は2022年までの40年間で2倍の34万人に増えたものの都市部に集中し、地方で不足しています。

(2025年5月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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