医師へのアンケート調査結果―Ⅱ

医師の地域診療科偏在
 医学部を卒業して医師免許を取得すれば、医師はどこでも開業し、法律で定められた診療科であれば自由に標榜できます。こうした自由開業、自由標榜のため、都市部や一部の診療科に医師が集中してしまい、地方における医療が維持できなくなっています。またこの偏在が過剰な医療を提供するなど医療費の高騰の一因にもなっています。政府は偏在を解消する目的で医学部の定員増や医学部新設で医師数を増やしてきました。今回の調査では偏在の直接的な背景については、67%が医師数の不足ではないと回答しています。都市部に開業医が多すぎることを指摘し、単なる医師数の増加は偏在の解消にならないと考えています。
 対策として、医学部で一定期間の地域での勤務を義務づける代わりに奨学金を出す地域枠の政策を都道府県などが拡大しています。しかし、今回の調査では地域枠が偏在対策になっているかを聞いたところ、そうは思わないが51%で半数を占めています。地方勤務の意思はあるかと尋ねたところ、49%が意思があると回答していますが、首都圏や愛知、大阪、福岡などで働いている人だと意思ありの回答は、2030%台に低下します。都会で働いている医師は、地方での勤務を希望していません。地域枠の制度により、地域間の偏在は相当解消すると思われますが、診療科偏在の解消は困難です。希望医師数が多い診療科には、定員制限を設けるなどの措置も必要になるかもしれません。

(2017年6月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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