医療の指揮系統の再構築

新型コロナウイルスの感染拡大で、首都圏を中心に保健所の対応能力の限界になってきています。保健所は、情報集約や調査の司令塔機能を担っていますが、感染再拡大に伴いパンク状態が各地で目立っています。医療崩壊の危機が叫ばれ続けてきていますが、どこに病床の空きがあるのか、保健所に限らず誰もリアルタイムでは把握・共有できない点が、最大の課題となっています。
病床の空きが分からなければ、おのずとアナログ対応になってしまいます。都内では、保健所職員が手当たり次第、病院に電話して空き病床を探すという対応が続いています。目詰まりに拍車をかける要因として、濃厚接触者を調べる積極的疫学調査もあります。足元では感染急拡大で調査を縮小する動きさえ相次いでいます。

保健所の対応には限界があり、都道府県や医師会などに業務の一部を引き受けさせるような体制作りが必要です。想定以上の感染拡大が続き、病床把握がままならない状況がある限り、さばけぬ事態は改善しません。入院調整に関しても、2020年春から都道府県の調整本部が対応する仕組みが形式上できてはいます。問題は実効性があるかどうかです。適切な医療を受けられない患者を生む構造と指揮命令系統から変えなければ、救える命も救えない状況が続きます。

(2021年8月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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