医療事故報告制度では、予期せぬ死亡について、医療に起因すると疑われる死亡で、管理者が予期しなかったものとしています。しかし、医療機関に判断が委ねられているため、医療機関ごとの対応の違いが指摘されており、届出数も想定を下回っています。厚生労働省は、今回の見直しで、判断基準や院内調査の方法などの全国共通化に向けて、意見交換する支援団体等連絡協議会(仮称)を設けることとしました。日本医師会や大学病院、国立病院機構など医療事故調査等支援団体と、医療事故の届出を受け付ける第三者機関日本医療安全調査機構が参加します。
担当医が院長などに死亡事例を報告せず、調査されないケースもあるため、遺族が調査を求めた場合に、日本医療安全調査機構が窓口となり遺族の要望を医療機関に伝えることとしました。医療機関の管理者は現場で起きた医療事故を、もれなく把握できる体制を確保しなければならないことを省令を改正して明確化しました。また日本医療安全調査機構が再発防止策を検討するため、院内調査結果の報告書の内容について、医療機関の同意を得て確認ができるように定めました。産科医療補償制度では、分娩時発症した重度脳性麻痺の子どもを補償するとともに、その原因分析を行い、再発防止に役立てています。医療事故が起きた時は、その原因を究明することも大切ですが、再発防止策を検討することも重要です。
(2016年6月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)