医療事故調査制度の仕組みは、医療機関が、患者の死亡を予期しない死亡と判断した場合、医療事故として医療事故調査・支援センターに報告し、院内調査委員会を設けて自ら調べるのが基本です。日本医療安全調査機構によれば、報告数は年370件前後ですが、5年間1度も報告したことがない医療機関は、400床以上の大病院に限っても約52%に上っています。
報告対象かどうかの相談を同センターが医療機関から受け、報告を勧めたケースが、これまでに計185件ありましたが、3割にあたる55件は、実際には報告されていません。事故調査をすれば、担当者や病院の責任が追及されるかもしれないと懸念し、医療事故ではなく予期された死亡としている例も少なくありません。問題点が解明されないままの病院と、要因を分析して医療の質向上に努める病院の二極化が進んでいます。
報告と調査が行われれば、結果は同センターに集積され、専門家の分析を経て再発防止策として医療現場で役立てられています。それは遺族の願いにも通じます。制度創設から5年が過ぎた今、調査を促進するために、本格的な改善策を検討すべき時期に来ています。
(2020年12月30日 読売新聞)
(吉村 やすのり)