各地で緊急事態宣言が発令され、国内医師の9割が登録するエムスリー(m3.com)の存在感が高まっています。新型コロナウイルスの感染拡大で訪問が難しくなった製薬各社が、医師への営業手法として活用しています。医師会員基盤と収集したデータを軸に、LINEや中国アリババ集団と提携し、医療情報のプラットフォーマーとしての役割を果たすようになってきています。
同社の強みは、国内医師の9割に相当する29万人を会員として抱えることです。医薬品や病気に関する情報を医師に提供し、サイトに掲載する対価を製薬会社などから受け取ります。コロナ禍でMRの訪問を規制された製薬各社は、営業活動の主軸をオンラインに切り替えました。医師の情報収集もネットにシフトし、サイトへのアクセス数はコロナ前と比べて1.5倍に増えています。私もよく利用しています。
製薬各社は1,000億円以上かかる新薬開発に経営資源を割くため、相次ぎMRを削減し、営業の比重をネットに移しています。コロナ禍が収束しても、医師への情報提供の手法は元に戻らないと思われます。エムスリーの真の強みは、サイトを通じて日々蓄積する医師の利用履歴データにあります。医薬品を選ぶ際、どのような要素が決め手になるかを分析し、それぞれの医師に効果的にアプローチできるよう、製薬会社を支援する取り組みを始めています。
(2021年1月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)