医療費の世代間格差の是正

医療費は高齢化で増加が続き、2040年度に70兆円台後半まで増えると推計されています。国民所得に占める税金と社会保険料をあわせた割合を指す国民負担率は、20年前は35%でしたが、2022年度は47.5%になっています。日本の給付と負担の水準は、これまで国際的にみて中福祉・低負担でした。少子高齢化が進むことで、将来、高福祉・低負担になる可能性があります。高福祉・高負担の北欧などと比べてもバランスを欠いています。
政府が、75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担の引き上げを検討するのは、社会保障の負荷が現役世代に偏っている構図を是正するためです。高齢化で社会保障費は今後も増加が避けられません。膨らむ給付を抑えつつ、負担を大胆に見直さないと世代間の格差は縮まりません。
差が目立つのは医療の分野です。現役世代が納める医療保険料は、高齢者が支払う分の3.6倍となり、20年前の2.8倍から差が広がっています。2020年度の35~39歳の保険料は、1人あたり年間30.8万円でした。会社員は会社と折半するため実質は半分ほどですが、2000年度に比べて5割増えています。一方で75~79歳の後期高齢者は年8.5万円であり、20年間の伸び幅は1割強にとどまっています。
政府は、改革工程の原案に75歳以上の後期高齢者の窓口負担引き上げ案などを盛り込みます。75歳以上の1人当たり医療費は現役世代の4倍以上で、一定の負担増が必要となります。高齢者は現役世代に比べて給与などの収入は少ない一方、資産を多く保有するケースがあります。能力に応じた負担という観点から、きちんと資産などを把握し負担してもらうべきです。

 

(2023年12月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。