医療費の自己負担額

現役世代が公的医療で支払う窓口負担は、診察でかかった医療費の3割です。しかし75歳以上の高齢者は原則として1割で、現役並み所得のある人のみが3割を負担しています。政府の全世代型社会保障検討会議が、2019年12月にまとめた中間報告では、2022年度までに、75歳以上であっても一定所得以上なら負担割合を2割とすると明記しています。国際的に見ると、日本の医療の自己負担は低率です。経済協力開発機構(OECD)によると、家計の最終消費支出に占める医療費負担の割合は2.6%で、OECD平均の3.3%を下回っています。一方、医療支出に税や保険料といった公的な財源が占める割合は84%で、加盟国で3番目に高くなっています。
医療費は高齢になるほど高い傾向にあります。高齢者が増え続ける中で負担の仕組みを変えない限り、現役世代が支払う保険料や税金を上げ続けるしかありません。実際、大企業の社員が入る健康保険組合の平均保険料率は上昇する一方です。75歳以上の負担割合に新たに2割の区分を設けるのは、こうした現役世代の負担増をやわらげる狙いがあります。
現役世代に過度な負担を求め続ければ、付則を見直し、3割という窓口負担の上限を突破せざるを得ない日がやってきます。上限3割という医療保険制度の基盤を少しでも長く維持するためにも、高齢者の負担の見直しを着実に進めていく必要があります。

(2020年2月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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