医療費削減―Ⅲ

大病院におけるベッド過剰
病院の過剰ベッドは、患者が集まりやすい大病院にも広がってきています。重症者向け大病院の入院患者数は、この5年で4%減少しています。大学病院など高度医療を担う219病院の4割弱で、入院患者数が減っています。医療の高度化で平均入院日数が短くなっているほか、入院日数が長いと診療報酬が減額される仕組みに変わったことも影響しています。
背景には地域の入院需要とのズレが潜んでいます。いま需要が増えているのはリハビリなどで身体機能を回復させる入院治療です。しかし、大病院は重症者向けが中心です。重症者の入院が減れば、病院は減収となってしまいます。これを避けるため定額制に上乗せして過剰に診療する動機が働くと、1人あたり入院費が必要以上に増えてしまいます。病床過剰地域でも、既存の病床枠は守られるため、病院が空きベッドを抱え込む非効率な体制が続いてしまいます。医療の高度化で入院の短期化傾向は今後も続きます。大病院が患者集めに走り、中小病院の病床余剰はより深刻になってしまいます。

(2019年3月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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