厚生労働省は、2021年度に医薬品の7割の品目で薬価を引き下げる方針です。4,300億円程度の医療費抑制につながります。厚生労働省は、これまで2年に1度、仕入れ値に近づける形で薬価を引き下げてきましたが、2021年度からは毎年改定を始めます。薬の取引の実態を速やかに薬価に反映し、患者負担をより軽くするためです。
日本医師会や製薬業界は、値下げの対象範囲をより狭めるよう主張してきています。値下げは、医療機関や製薬会社の経営に打撃を与えます。新型コロナウイルス流行で、医療機関の受診を控える動きが広がり、患者が減るなど事業環境が悪化する中、薬価引き下げが追い打ちになることが予想されます。
高齢化に伴う社会保障費の伸びをどう抑え込むかは、毎年度の予算編成の課題となっています。医療費全体に占める薬剤費の割合は概ね2割程度であり、金額にして年間10兆円です。医療費の4分の1は国費で賄われているため、今回の値下げで、抑え込む医療費約4,300億円のうち、1,000億円規模の国費を削ることができます。
(2020年12月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)