卵子凍結のガイドラインについて

悪性腫瘍等の治療で放射線治療や化学療法を実施する際、性腺機能が低下する場合があり、これらを女性に対し医学的な適応として未受精卵の凍結が行われてきた。

これまで卵子の凍結に関しては、日本産科婦人科学会が「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する見解」に沿って実施されてきた。しかしこの見解においては、医学的な適応についての注意事項、そして適応基準が決められていなかったため、日本生殖医学会は新ガイドラインを作製した(8月26日研究所HP記事参照)。

一方、海外では健康な独身女性のために卵子の凍結保存がさかんに実施されているが、国内でも水面下でサービスを提供する医療機関がでてくるようになってきた。しかしながら、独身女性の意志による卵子の凍結保存が、十分な説明のないまま実施されていない現状を考慮して、このたび指針案を作製した(8月27日研究所HP記事参照)。

広く国民の間でこのガイドラインのコンセンサス(合意)が得られれば、早急に卵子や卵巣の凍結保存のための施設決定基準を設けることが必要となるであろう。 妊娠・分娩をするかしないか、その時期をいつにするかはあくまで当事者の選択に委ねられている。母児の合併症やさまざまなリスクを考慮すると妊娠・分娩には適切な年齢がある。女性は25歳から35歳の間に自然妊娠・出産することが生理的であることを忘れてはならない。女性が出産や育児でキャリアを中断しても復帰しやすい社会に変えていくことが優先課題であることには謷言を要しない。

(吉村 やすのり)

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