ある種の遺伝子異常を持つ人は、持たない人に比べて乳がんや卵巣がんにかかるリスクが相当に高くなることが以前から知られています。リスクを軽減するための卵巣卵管切除術が、実際にがんにかかる割合を減少させるのかどうか、それによって死亡率は減少するのか、これほどの数報の調査結果が発表されています。2種類の乳がん原因遺伝子である、BRCA1とBRCA2に変異を持つ女性を対象として、33か国から約3万人の過去10年以上のデ-タを分析しました。
その結果、BRCA1変異を持っている女性のうち、46%が乳がんに罹患し、12%が卵巣がんに罹患していました。BRCA2変異の女性ではそれぞれ、52%と6%が罹患していました。一般女性の罹患率は、乳がんが約8%、卵巣がんが1%ともいわれていますから、明らかに高くなっています。
BRCA遺伝子異常を持つ女性約2400人を対象に、切除を行った女性の死亡率を追跡したところ、卵巣がんが原因で死亡した割合は、切除した女性で0.4%、しなかった女性は3%でした。乳がんによる死亡率も調べた結果、それぞれ2%と6%でした。ある程度リスクを共有する遺伝子異常ですから、卵巣を切除した女性は乳がん死亡率も低くなっています。人種差もあることから、今後はわが国においてもこうした臨床研究が必要になると思います。
(吉村 やすのり)