現状
1997年にDonnezらによって卵巣組織凍結がヒトに応用されるようになり、2004年に凍結卵巣の融解移植による最初の出産例が報告されています。具体的には、25歳のホジキン病患者の卵巣を化学療法施行前に腹腔鏡下に一部摘出し、凍結保存しました。初回治療から6年経過した完全寛解後、融解した卵巣組織を卵巣の血管近傍の腹膜と右卵管采近傍の腹膜に移植しました。その結果、移植後約半年で卵管を有する血中ホルモン動態を示すようになり、移植11ケ月後に自然妊娠が成立し、ヒトで初めての生児獲得に成功しました。現在、世界中で30名強の出産例が報告されています。
これまでの妊娠例の報告も少なく、白血病や消化器系がんなどでは、凍結保存した卵巣組織中にがん細胞が残存していることもあり、現時点では臨床研究として実施されるべきであるという見解が米国生殖医学会から出されています。
(吉村 やすのり)