適応の指針
Wallaceはエジンバラ・セレクション・クライテリアに則って卵巣組織凍結・移植を行い、そのクライテリアの有効性を2014年Lancet誌に報告しています。このコホ-ト研究の対象は1996年から2012年までにエジンバラ小児腫瘍センタ-で治療を受けた、診断時18歳未満の小児若年女性がん患者410名です。このクライテリアでは卵巣組織凍結の適応として、50%を超える可能性で早発卵巣不全となりうる治療をあげており、これには毒性の強い化学療法あるいは卵巣を含む腹部への放射線治療が含まれます。このクライテリアは卵巣組織凍結の適応に関する指針となり得ると思われます。
わが国では、日本産科婦人科学会が、医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の採取・凍結・保存に関する見解を2014年4月に発表しています。「悪性腫瘍などに罹患した女性に対し、その治療を目的として外科的療法、化学療法、放射線療法などを行うことにより、その女性が妊娠・出産を経験する前に卵巣機能が低下し、その結果、妊孕性が失われると予測される場合、妊孕性を温存する方法として、女性本人の意思に基づき、未受精卵子を採取・凍結・保存することが考えられる。」としています。
(吉村 やすのり)