タバコの先から立ち上がる副流煙には喫煙者が吸い込む主流煙よりも多くの有害物質が含まれています。したがって、その影響は肺がんをはじめ、喘息などの呼吸器障害や心筋梗塞などにも及びます。これがいわゆる受動喫煙による害です。わが国における受動喫煙死は国立がん研究センタ-の推計では年間約2万人とされており、厚生労働省研究班による肺がんと虚血性心士官に限った受動喫煙被害調査でも受動喫煙により年間約6800人が死亡していると推定されています。夫が喫煙者の場合、同居する非喫煙者の女性の肺腺がんリスクは2倍近くなり、肺腺がんを発症した非喫煙者女性の37%は、夫からの受動喫煙を避ければ発病を防げたと報告されています。
WHO(世界保健機構)による各国のタバコ規制状況の評価では、日本の受動喫煙対策は2008年の報告以降、常に最低ランクです。日本でもそろそろ本格的に受動喫煙防止対策を進めなければなりません。日本医師会は、2012年に受動喫煙ゼロ宣言を発表しています。妊婦や乳幼児の家庭内での受動喫煙防止の推進を掲げているほか、公共的な施設の敷地内全面禁煙を国や自治体に働きかえることを明らかにしています。
(日医雑誌 143:PS3-PS-4,2015)
(吉村 やすのり)