受動喫煙対策に憶う

受動喫煙対策を訴える肺がん患者に対し、自民党の国会議員が「いい加減にしろ」と6月15日の厚生労働委員会でヤジを飛ばしたことが問題となっています。参考人として委員会に出席したのは、日本肺がん患者連絡会理事長の長谷川一男氏です。長谷川氏は御自身も肺がん患者であり、その立場からも原則として屋外でもなるべく吸ってほしくないというのが肺がん患者の気持ちですと述べていました。自民党議員はこの発言をしたことを認め、謝罪しています。参考人のご発言を妨害するような意図は全くなく、喫煙者を必要以上に差別すべきではないという思いでつぶやいたと弁明しています。
喫煙者が吸うたばこの煙には約70種類の発がん物質が含まれており、受動喫煙で周囲の人が吸い込む副流煙にも発がん物質やニコチンなどの有害物質が数多く含まれています。受動喫煙により、毎年世界で60万人が亡くなっています。日本では受動喫煙が原因となって発症する肺がんと心筋梗塞だけでも、年間約6,800人が死亡しています。受動喫煙で3,200億円の医療費が発生しています。喫煙者は受動喫煙に苦しんでいる人々の気持ちを全く理解していません。一方、喫煙者における肺がんや胃がん、虚血性心疾患などによってかかる医療費は、年間約1兆2,000億円にも上っています。
参考人として出席された肺がん患者に、「いい加減にしろ」との発言は、国会議員である前に一社会人としての見識のみならず人間性を疑います。参考人はもとより、受動喫煙の害で苦しむ人々に対して、直接謝罪すべきと考えられます。このような発言をする国会議員は、健康増進法を審議する厚生労働委員会のメンバーとして極めて不適切であり、不規則発言が飛びかう委員会で受動喫煙対策が審議されているようでは、受動喫煙を防止するための立法化を含めた措置を講ずることは困難としか思えません。がん患者の代表として、また当事者として受動喫煙の害を訴えられた参考人に対して、あまりにも誠意のない謝罪です。
自民党議員は、喫煙者を必要以上に差別すべきではないという想いで発言されたとのことですが、喫煙者が周囲の人々の健康に悪影響を与えない状況下で喫煙されるのであれば問題ありません。公共施設のみならず、路上での喫煙は、非喫煙者にとっては迷惑です。今後喫煙者は、周囲の人に迷惑のかからない人里離れた場所、家族の理解が得られるならば家庭での喫煙しか許されなくなってしまいます。喫煙者は、受動喫煙の害を訴える人に対して喫煙の是非について語る権利があるとは思われません。全国の愛煙家の方々、一日も早い禁煙を望みます。

(吉村 やすのり)

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