国際通貨基金(IMF)は、2020年の世界経済成長率をマイナス4.4%と見込んでおり、コロナ禍で主要国経済は大恐慌以来の不況となってしまいました。イタリアがひときわ厳しい経済状況に陥ったことが見て取れます。アメリカは、世界で最も感染者数が多いにもかかわらず、相対的に景気の落ち込みは小さく、回復力もあります。背景には、コロナ感染拡大の中にあっても底堅い個人消費があることです。
日本は、相対的なコロナ感染の小ささや緩やかな外出規制もあって、経済の落ち込みはイタリアよりずっと小さいのですが、アメリカより落ち込みは大きく、回復は乏しくなっています。日本政府は、事業規模総額233兆9,000億円の対策を打ってきました。IMFによると、この日本の財政支出の対GDP比は、アメリカの12.3%に次いで二番目に大きい11.3%であり、企業への雇用調整助成金や家計への特別定額給付金などは、企業の資金繰りと収入が細った人々を大いに支えてきました。
外出自粛による消費減の影響に加えて、特別定額給付金を4割の人が預貯金にすると回答した結果もある中で、4~6月の家計貯蓄率は、1~3月の7.8%から23.1%に急上昇しています。その一部は、大都市圏のマンション購入や株式投資など不動産・金融投資に向かっています。しかし、失業者が増加しており、せっかくの景気下支え策も経済浮揚に完全には回らず、アメリカ同様に所得格差拡大につながっています。
(Wedge January 2021)
(吉村 やすのり)