一億総活躍国民会議では、同じ仕事なら同じ賃金を支払う同一労働同一賃金に向けた指針策定を指示しました。専門家による検討会を立ち上げ、具体案作りを始めることになります。正規雇用の賃上げに続いて非正規の待遇底上げを実現し、経済の好循環を生み出すのが狙いです。同一労働同一賃金を定めた明文の規定は日本にはありません。これまでも非正社員の待遇を改善するための法改正はされてきましたが、十分な効果は上がってきませんでした。
同じ仕事をしている社員は、雇用形態にかかわらず、通勤手当や出張旅費、店長手当などを同額にするようにします。これで正社員と非正規社員の所得格差を縮めるのが、現実的な目標だとみています。非正規社員はこれまで考慮されなかった業務への熟練度合いなどを評価されたり、手当が上がったりすれば所得が増える可能性があります。正社員の賃金を維持したまま、非正規社員の賃金を上げるには、総人件費を上げるしかありません。逆に総人件費を増やさずに非正規の賃金を上げるには、正社員の賃金を下げるしかありません。
(2016年2月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)