厚生労働省は、「同一労働同一賃金」の具体的なルールとなる指針を示しました。基本給や賞与、福利厚生などについて不合理とされる待遇差を例示しました。正規社員の待遇を引き下げて格差を解消することは「望ましくない」としています。同一労働同一賃金は正規職員と、パートや派遣社員など非正規社員の不合理な待遇差の解消を目指す取り組みです。6月に成立した働き方改革関連法に盛られ、2020年4月から順次適用されます。
新たに追加したのは、同一賃金に向けて、労使で合意することなく、正規社員の待遇を引き下げることは、望ましい対応とはいえないとの考えを打ち出しています。指針では、正規社員と非正規社員の能力や経験などが同じなら基本給や賞与は同額を支給するよう求めています。通勤手当や出張旅費は、正規社員と同一額を支給しなければならないとしています。更衣室や休憩室、転勤者用の社宅など福利厚生も、原則として正規社員と差をつけてはいけないとしています。退職金や家族手当などは、不合理な待遇の相違の解消が求められるとしています。
日本では、非正規社員の賃金水準は正規社員の約6割にとどまり、欧州に比べて格差が大きくなっています。一方で非正規社員は2千万人を超えており、労働者の約4割を占めています。厚生労働省の調査によれば、正規社員と職務が同じパートがいる民間事業所のうち、正規社員には86%が賞与を支給していますが、パートは51%にとどまっています。役職手当は正規社員で77%、パートは19%と格差が大きくなっています。働き方が多様化する中で労働者の意欲を高めるには、不合理な待遇格差をなくす必要性が高まっています。
(2018年11月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)