性的少数者(LGBT)のカップルを異性間と同様に受け入れようとする動きが自治体や企業で広がっていますが、国が同性婚を認めない現状では、当事者の権利は制限され、不安定な立場に置かれたままです。長期間同居し、米国で結婚した同性パートナーの不貞行為をきっかけに関係が破綻したとして、30代女性が約630万円の損害賠償を求めた訴訟を起こしていました。宇都宮地方裁判所真岡支部は、一緒に住んでいた同性カップルを事実婚に準ずると認定しました。憲法24条は、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すると規定しており、日本国内で法制化の動きはありません。
判決理由で、事実婚は男女間を前提にしてきましたが、諸外国で同性婚が認められ、日本の自治体が同性カップルを公的に認証する制度を作るなどの社会情勢の変化を踏まえ、同性カップルでも一定の法的保護を与える必要性は高いと判断しています。その上で、実態から事実婚と同視できる関係であれば、不法行為に伴う法的な保護を受けられると指摘しています。約7年間同居し、米国で結婚証明書を取得していることなどから、男女間の事実婚と何ら変わらない実態を有していると認定しました。
今回の判決は、同性であっても関係を不当に破棄・解消された場合に、一定の法的保護を初めて認めた司法判断となります。法的保護の必要性があるとしたこの判決は、同性婚の法制化の流れを後押しすることになるかもしれません。地裁レベルの判断ですが、価値観の多様化や同性婚を認める世界各国の流れ、国内での同性パートナーシップの広がりを踏まえており、同性婚の容認に向けた大きな一歩となるかもしれません。
(2019年9月19日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)