名目GDP(国内総生産)が節目となる600兆円を初めて突破しました。名目GDP600兆円の目標は、2015年に当時の安倍晋三首相が打ち出しました。アベノミクス新3本の矢の第1の矢である強い経済の象徴として掲げていました。当時は達成時期を2020年頃としていましたが、新型コロナウイルス禍などを経て、4年遅れで達成しています。
日本の名目GDPは、1973年に初めて100兆円を超え、1992年に500兆円を上回るまで約5年ごとに100兆円ずつ増加していました。バブル経済の崩壊を経て1990年代以降は伸び率が鈍化し始め、リーマン・ショック後の2009年代や東日本大震災のあった2011年には500兆円を割り込むまでに落ち込みました。
今回けん引役となったのは、個人消費に次ぐ民需の柱である設備投資の拡大です。設備投資は名目で前値比4.6%増の105兆円で、2年連続で100兆円を超えました。GDPが500兆円を回復した2012年と比べ38.9%増えています。
GDPの半分以上を占める個人消費も、2024年には名目で329兆円で、2012年の288兆円と比べ14.1%増えていますが、実質では0.6%増とほとんど横ばいの状況です。近年では例年大型の補正予算が編成されるようになり、国の歳出が増加傾向にあることも名目GDPの増加に寄与しています。2024年の政府支出は2012年比25.7%増の125兆円、公共投資は27.3%増の31兆円でした。
(2025年2月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)