唾液や尿の成分を調べて、がんを見つける研究が進んでいます。東京医科大学らは唾液を使う膵臓がんの検査法を、国立がんセンタ-らは尿から膀胱がんを見つける技術を開発しようとしています。がん細胞では増殖や転移などに関係する物質を多く出し、それらが血液中に入ります。唾液は血液がもとになっており、尿には血液中の物質が腎臓より排出されます。こうしたがん特有の物質を手がかりにがんの有無を調べます。
膵臓がんでは、毎年3万人を超す人が亡くなっており、肺がん、大腸がん、胃がんに次いで多いがんです。特定の2種類の物質が多く含まれると、膵臓がんの可能性が高いとされています。これまでの研究では9割の精度で判別できており、早期の膵臓がんでも効果を期待できるとされています。また膀胱がんがあると、がん細胞が出す袋状の微粒子が増えるとされています。膀胱がんは自覚症状が表れにくく、年間8千人近くが亡くなっています。精密検査は膀胱に内視鏡を入れて調べるため大きな痛みを伴います。尿検査のニ-ズは高いとされており、3年後の実用化を目指しています。ともに苦痛を伴うことなく安価であることが魅力です。
(2015年10月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)