喫煙による重症化リスク―Ⅰ

喫煙者は感染しやすい
たばこを吸う人は、新型コロナウイルスによる肺炎が重症化したり、死亡につながったりしやすいとされています。中国の研究チームの発表によれば、集中治療室(ICU)への入室が必要になったり、亡くなったりした人の割合は、たばこを吸わない人が4.7%だったのに対し、以前吸っていた人を含めた喫煙者では13.9%と、ほぼ3倍に達しています。また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)という病気があって感染した人では、ICUでの治療を必要としたり死亡したりするリスクが、年齢などを調整したうえで2.7倍高いとしています。COPDは、たばこ病という通称もある病気で、たばこなどによって気管支に炎症が起きたり、肺の奥にある肺胞が壊れたりして起こります。
一般的な肺炎でも、喫煙者が重症になりやすいことは以前から知られています。日本人約11万人を対象にした調査によれば、喫煙者は非喫煙者の1.6倍、肺炎による死亡率が高いといった報告があります。喫煙している人では、異物を取り除く気道の機能が落ちて感染を起こしやすくなり、免疫力も落ち、症状が重くなりがちです。
以前吸っていた人を含む喫煙者の肺では、特定のたんぱく質の動きが活発になっています。新型コロナウイルスは、肺の細胞にあるこの特定のたんぱく質である受容体にまず取りつき、そこから侵入することがわかっています。喫煙者ではこの受容体が多く、感染しやすい可能性があります。喫煙は、がんや心臓病、糖尿病にかかるリスクも高めます。新型コロナウイルス感染で重症化しやすいとされるのは、これまでの報告によると高齢者のほか、心臓病や糖尿病などを抱える人たちです。こうした病気を介して、間接的に重い症状を招いているかもしれません。

(2020年4月23日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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