2004年の国立大学の法人化や2007年の郵政公社の民営化で、国家公務員の定員は見かけ上、大きく減少しています。さらに政府は、2020年度から5年間で1割を減らす計画で、仕事の負荷は一層高まっています。霞が関の残業時間は月平均100時間で、民間のおよそ7倍にも達しています。精神疾患による休業者の比率は3倍、自殺者の比率は1.5倍、民間より高くなっています。厚生労働省によれば、残業が月100時間超または2~6カ月平均で月80時間を超えると、健康障害のリスクが高まるとされています。
中央省庁は、長時間勤務やハラスメントなどで現場の疲弊が目立ってきています。難関の国家公務員試験をくぐり抜けた先に待つ旧態依然とした働き方をみて、やる気をなくす若手も少なくありません。働き方改革の声は、役所からあがりにくくなっています。役人は法案・政策を理解してもらうためのご説明や、審議の質問を聞き出す問取りで国会議員のもとを足しげく通っています。議員もそれを当然だと考えています。効率化したいと声を上げれば、国会軽視だと議員に厳しく批判されてしまいます。
国会の会期中、役所の担当分野・法案について与野党の議員から審議での質問を聞き出し、官僚らの答弁案を作らなければなりません。審議の前は、この作業が延々と深夜まで続きます。霞が関はその旗振り役でもあるはずなのですが、実態は非常識ともいえる長時間労働が残っています。
(2019年12月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)