国連の女性差別撤廃委員会が、日本政府を8年ぶりに対面審査し、改善勧告を出しています。選択的夫婦別姓や同性婚の導入など、勧告の内容は多岐にわたります。女性差別撤廃委員会には、各国から選ばれた女性分野の専門家23人が所属しており、1回の会期で8カ国の審査を分担します。国別の作業部会に十数人の委員が組織されています。
選択的夫婦別姓の導入についての勧告は4度目で、それでも変わっていません。勧告に法的拘束力がないと指摘する声もありますが、委員は人権分野の世界的な専門家であり、その指摘は重いものがあります。国際的には、勧告が出た以上は履行する努力が当然のことだと認識されています。日本でジェンダー不平等の状況が放置されていることは、海外からはしっかりと認識されています。
審査では、リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)も主な論点となりました。日本は母体保護法に基づき、人工妊娠中絶に原則、配偶者の同意が必要だと定めています。緊急避妊薬へのアクセスも容易ではありません。委員からは近代的な国家として、非常に驚くべきことと改善を求められています。政治分野についても言及があり、国会議員に立候補する際に支払う供託金を女性には減額にすることも勧告しています。同性婚を認めることや、性別変更のために不妊手術を受けた当事者への賠償も求めています。
日本が女性差別撤廃条約に批准してから来年で40年になります。世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数では146カ国中118位と低いままです。ジェンダー不平等が深く根付いている現状を変えるには、強い法や政治の力が必要です。
(2024年12月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)