経済協力開発機構(OECD)は、79か国・地域の15歳計約60万人を対象に、2018年に実施した国際学習到達度調査(PISA)の結果を公表しています。日本は読解力が15位で、前回の2015年調査の8位から大きく順位を下げています。数学的応用力と科学的応用力は、上位を維持しました。3分野とも1位は中国、2位はシンガポール、3位はマカオと、アジア勢が上位を独占しています。読解力が8位から14位、数学的応用力が1位から6位に低下した2003年調査は、PISAショックと呼ばれ、学習内容を減らしたゆとり教育の見直しにつながりました。読解力では、表現力などを重視した全国学力テストの導入などで、その後順位は上がりましたが、2015年が8位、今回は15位と再び下降しました。
近年、教材の文章を理解できない子どもが増えているとの声が聞かれます。今回、読解力の調査で、成績下位層の割合が顕著に増加しています。背景には、新聞などでまとまった文章に触れる時間の減少や、学習でのICT(情報通信技術)活用の遅れといった複合的な要因が指摘されています。
スマートフォンの普及により、子ども達のコミュニケーションでは、仲間同士の短文や絵文字のやり取りが中心になっています。長い文章をきちんと読み、分かりやすい文章を書く機会が減っています。子どもを取り巻く言語環境の変化が、今回の読解力低下の一因となっていると思われます。一方で、小説や伝記、ルポルタージュ、新聞まで幅広く読んでいる生徒は、読解力の得点が高くなっています。活字に触れていることが、文章を的確に理解する力を育んでいるのは間違いありません。
文部科学省は、今後小中学高校の国語の授業などで、文章の論理展開を重視した指導を充実させる方針です。論理的思考力の涵養に加え、文学に親しむ時間もしっかりと確保することが大切です。深く考え、自分で表現する習慣を身につけなければなりません。
(2019年12月4日 読売新聞)
(吉村 やすのり)