在宅勤務での残業を認めない企業は少なくありません。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によれば、実施を認めていない企業が23%に達しています。企業側からは、就業時間中に従業員が業務に専念しているか不安視する声が消えません。新型コロナウイルス禍以前の米国では、勤務の管理ができないとして在宅勤務から出社に戻すIT企業もありました。労使の相互不信から上司の在宅勤務への監視が行き過ぎているといった指摘も出て、リモートハラスメント(リモハラ)という新語が生まれました。
在宅勤務のお金にまつわる問題は他にもあります。代表例が光熱費や通信費です。特に冬場に家の暖房を長く使うようになり、電気代が目に見えて増えたという声は多くみられます。月4,000円程度の費用が発生しているとの試算もあります。厚生労働省は、労働者に過度な負担が生じるのは望ましくないとして、労使でどう負担するかルールを定めるべきだという考えを示しています。
急拡大する在宅勤務に対して、現行の制度は追いついていません。在宅勤務を含めた自由な働き方に対する裁量労働制に関する法改正が望まれます。コロナ後の社会を見据えた再点検が必須です。
(2021年5月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)