在宅医療の必要性

日本の医療は平均在院日数が約30日に達し、英国の7日や独仏の9~10日と大きな差があります。人口千人あたりのベッド数も米英の4倍を超え、医療費のうち4割近くは入院にかかっています。政府は入院患者を在宅に移すことを医療費を抑える施策の一つに位置づけています。在宅医療では、病気になって通院するのが難しい人が入院せずに自宅で医師の治療を受けます。医療費の抑制に向け、政府が進める在宅医療の体制整備が遅れています。全国の4分の1にあたる452市町村で、医師らを派遣する中核施設がなく、人口あたりの施設数は都道府県の間で最大4倍もの格差があります。入院せずに自宅で過ごす在宅医療は患者のニーズも大きいものがあります。
都道府県別に見ると、65歳以上の人口10万人あたりの施設数が最も多いのは大阪の82.5カ所です。東北各県は福島県を除くと、大阪の3分の1から4分の1程度です。北海道は6割にあたる108市町村が空白地で、東北でも整備遅れが目立っています。千葉県でも銚子市など14の市町村で施設が存在しません。都市部でも医師が高齢化している地域が多く、夜間に往診するスタッフがいません。日本では人生の終末期を自宅などで送りたいと思う人が6割にのぼっています。患者の生活のQOLの観点からも在宅医療のニーズは高くなっています。

(2018年8月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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