在留外国人の急増に憶う

 日本の全人口に占める外国人の比率は2.9%と、10%を超す欧米に比べると低い水準です。しかし、日本で働く外国人労働者数は2024年は前年比12.4%増え、2年連続で2桁の急激な伸び率になっています。インバウンドも1~6月に過去最速で2,000万人を突破し、年間で4,500万人に達するとの推計もあります。

 日本で働く外国人が増えている主因は、人口減少と少子高齢化です。団塊世代の現役引退で日本の労働力人口は急速に縮小しています。全国で人手不足の悲鳴が上がり、それを外国人が穴埋めしています。ロボット導入などで省人化は進むと思われますが、需要が急増する介護分野などでは外国人労働力は不可欠です。また、デジタル分野などの技術革新には、外国からの高度人材の誘致は必須です。

 7月の参院選では外国人問題が争点のひとつになりました。日本経済新聞の世論調査によれば、外国人受け入れを広げるべきだという回答が45%、広げるべきではないが46%と意見は拮抗しています。文化や慣習が違う外国人が増えるにつれ、日本社会との摩擦もみられます。特定の観光地に外国人客が集中するオーバーツーリズム、外国人のゴミ出しなどのマナー違反、犯罪による治安悪化への懸念、海外からの投資に伴うマンション価格の高騰などが問題となっています。

 日本人として外国人にも守ってもらいたい社会ルールは明文化して示すことが必要となります。外国運転免許の日本免許への切り替え、経営・管理ビザ、民泊など基準の緩さの問題が指摘される制度もあります。悪用・乱用を防ぐ見直しは必要です。在留期間に上限が無く家族帯同も可能になる特定技能2号の労働者が今後増えていく中で、日本語の教育は、外国人の社会への統合のためにも大切です。外国人の力も活用して日本の国内経済を強くしていくことが取るべき道であり、強い経済力を取り戻すことが日本の安全保障にもつながります。

(2025年8月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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