在留外国人増加による財政改善

 2024年末時点の在留外国人数は約377万人と、前年から11%増えています。外国人労働者の受け入れが経済に欠かせないとの見方がある一方、日本人の雇用との競合や、治安への悪影響を懸念する声もあります。日本経済新聞らの調査によれば、在留外国人が増えることで財政収支が改善するとの見方が66%に上っています。若い外国人労働者が人手不足を補完し、税や社会保険料の支払いも大きいためです。外国人の定住や高齢化を見据えた制度設計を求める声も多くみられます。

 建設や運輸などの分野では人手不足が目立ち、外国人の就業増加によりモノやサービスの供給不足や価格上昇が抑えられるとして受け入れのプラス面がみられます。日本人の雇用との競合も限定的との見方が大勢でした。外国人と日本人労働者は主に補完的関係にあり、日本人の賃金や失業率に負の影響を与えていません。

 外国人が新しい考え方を職場にもたらすことは、生産性向上につながり得ます。在留外国人の増加を巡っては、生活保護など公的支出の増加や社会保険料の未納を不安視する見方もあります。しかし、法務省の在留外国人統計によれば、2024年末時点で20代と30代が在留外国人の55.9%を占めています。外国人の受け入れ増は、働き盛り世代の割合を高めて税収や社会保険料収入の増加につながると思われます。

 外国人の受け入れが長期的に経済や財政の安定に寄与するかは、今後の制度設計にかかっています。多様なバックグラウンドを持つ人々が持続的に共生しうる社会を実現するには、財政支出も含む包括的な多文化共生政策が必要となります。

(2025年7月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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