地方からの女性の流出

 地方から女性の流出が止まりません。女性が働きやすい場所が少なく、出産・育児の環境も整っていません。地方の女性の仕事の選択肢は限られます。非正規雇用も多く、男女間の賃金格差が、若い女性の地方からの流出につながっています。マイナビの調査によれば、都会の方が生活の上で便利、志望する企業がないという理由で地元での就職を希望しない女性が多くなっています。

 出産適齢期の女性が流出した地方は人口の維持が難しくなります。人口戦略会議の報告によれば、20~39歳の女性人口の減少率が2050年までの30年間に50%以上となる自治体(消滅可能性自治体)は、744自治体に上るとされています。全体の4割超です。子どもを産み育てる場所も少なく、女性が減少することで分娩を扱う施設が経営難に陥り、それが一層の女性流出を招く悪循環に陥っています。

 子育てで親や家族のサポートを受けやすい利点はあるものの、根強く残る子育ては女性が担うものという風土も女性を地方から遠ざけています。内閣府の最新の世論調査では、全国10地域のうち北海道など6地域で、男は仕事、女は家庭の価値観に賛成する割合が高くなっています。Z世代では男女共に共働き希望が多く、女性だけでなく男性の東京流入も今後加速します。

 世界経済フォーラムの2024年のジェンダーギャップ指数によれば、日本は146カ国中118位の低さです。0が完全不平等、1が完全平等を表す指数は、政治分野では0.118と特に低率です。日本の利益集団政治とは、男性の政治家や官僚に対して、男性の利益集団が圧力活動を行う過程であるとの考え方もあります。意見が反映されない場から去る女性は、合理的な選択をしているとも言えます。

(2025年3月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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