2015年に各国が合意したパリ協定では、温暖化による壊滅的な被害を防ぐため、産業革命からの世界の平均気温の上昇を2度未満、できれば1.5度に抑え、今世紀後半の排出実質ゼロを目指しています。そのために削減目標の提出を各国に求め、5年ごとに見直して対策を前進させる仕組みです。排出量が世界で2番目に多い米国は、トランプ前政権が2017年に離脱を表明しましたが、バイデン大統領になり、2021年2月に復帰しています。
(2021年4月23日 日本経済新聞)
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書は、1.5度目標の達成には2050年までに排出量を世界全体で実質ゼロにする必要があり、2030年時点で2010年比で約45%減らすことが前提になると指摘しています。国連環境計画によれば、各国のこれまでの目標を実行しても、今世紀末までに3度上がる可能性があります。気温の上昇は、ほぼ排出の累積量で決まってきます。今の排出量が続けば、2030年代には1.5度になる量の上限に達してしまう恐れがあります。
目標の実現には、再生可能エネルギーの大量導入や省エネなど2030年までの取り組みがカギを握っています。まず太陽光や風力発電を増やしつつ、送電網などのインフラ整備も不可欠になります。石炭火力発電などからの排出削減も急務です。課題は山積みですが、新たな目標は脱炭素社会に向け動き出すきっかけになります。
(2021年4月23日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)