増加する大腸疾患

食の欧米化などによって大腸疾患を発症する人が増えてきています。大腸で発生する病気は、炎症、腫瘍、機能障害の3つに大別されます。大腸の炎症には、原因が明確なのものと、明らかになっていないタイプがあります。ウイルスや菌が引き起こす胃腸炎などの感染性や、特定の薬で発症する薬剤性腸炎は、原因が明確です。他には大腸憩室炎があり、高齢者など患者数が増加しています。憩室は腸壁の一部が小さな袋状に飛び出した隙間に便が入り込んで細菌感染すると炎症が起こります。
原因が特定されない炎症には、クローン病と潰瘍性大腸炎があり炎症性腸疾患と呼ばれています。ともに、下痢や激しい腹痛が頻繁に起こり、血便、体重減少などが見られることもあります。炎症性腸疾患は欧米で多い病気ですが、国内でも増加しています。この30年で、クローン病の患者は8倍の約4万人、潰瘍性大腸炎は6倍の約12万人になっています。ともに国から医療費が助成される指定難病です。
クローン病の特徴は、10~20代の若い世代に多いことです。主に小腸や大腸で炎症が散発的に広がります。炎症は腸壁の深い層まで達することがあります。一方、潰瘍性大腸炎は20~30代に多いのですが、最近は中高年になって発症する例が目立ち始めています。炎症は原則、大腸に限られ、広い範囲に連続して発生し、腸壁の浅い層にとどまります。
クローン病、潰瘍性大腸炎ともに、内視鏡検査、X線造影検査、病理組織検査などで診断します。ともに抗炎症作用のあるステロイド剤など内服薬による治療が行われます。症状が悪化して大量出血した場合などは手術が必要になることもあります。クローン病では脂肪分を多く含む食品を制限するなどの栄養療法も進めます。潰瘍性大腸炎は、過労やストレスで症状が悪化しがちなため、無理な生活はしないように心がけることが大切です。
大腸の腫瘍は、がんとポリープに分けられます。大腸がんは、すべてのがんの中で罹患率と死亡率が上位3位に入っています。しかし、早期発見で進行を抑えられる可能性は高く、初期のステージ1で治療すれば、5年生存率は9割以上です。ポリープは良性が多いのですが、一部はがんになることもあります。

(2020年10年17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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