増加するE型肝炎

 肝炎ウィルスにはABCDE型がありますが、動物から人に感染する人獣共通の感染症はE型肝炎だけです。ウィルスを持っているのは豚、イノシシ、シカ、ウサギやマング-ス、ラクダなどが知られています。E型はA型に似ていますが、重症である劇症肝炎になるリスクがA型より10倍も高いと言われています。E型肝炎ウィルスの遺伝子は多様ですが、日本で見つかるのは主に3型と4型と呼ぶタイプです。これまで報告されている劇症肝炎の多くは、4型による感染ですが、3型は重症化せず、軽症で済むと考えられています。
 生肉を食べて、E型肝炎になるケ-スが目立ってきています。厚生労働省は飲食店などで、レバ-など内臓を含む豚の食肉を生で提供することを禁止しました。動物から人に感染することがあるE型肝炎にかかるリスクが高いからです。と畜場で食肉用に出荷された豚の肝臓を調べたところ、約2%がウィルスを持っていたという報告もあります。北海道や都内のス-パ-マ-ケットや精肉店の生の豚レバ-を調べたところ、2%前後でウィルスが検出されたと言われています。最近のE型肝炎の患者はほとんどが国内での感染です。E型肝炎は生肉などを食べてウィルスに感染してから発病するまでの期間が平均6週間と長く、感染源を絞り込むのは難しいところがあります。ウィルスに感染しても症状が出ないことも多いとされています。ただ、高齢者が感染すると黄疸や発熱、負嘔吐、全身のだるさといった症状が出やすくなります。まれに急性肝炎が悪化して劇症肝炎になることがあります。

(2015年6月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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