政府は、進学に伴う家計の負担を軽くするため、3人以上の子どもを扶養する多子世帯の大学の授業料を無償化する法改正案を閣議決定しました。所得制限をなくし、2025年度から新たに41万人が支援対象となります。現在の支援制度の利用者は対象となる学生の6割ほどにとどまり、高校を通じた学生や保護者への周知が必要となります。
国公立大の多くは授業料と入学金の家計負担がゼロとなり、私立大も大幅な負担減となります。支援対象となるのは、扶養する子どもが3人以上で、大学や短大、高等専門学校、専門学校に通う学生がいる世帯です。子どもが3人いる世帯でも第1子が就職して扶養を外れた場合、第2子以降は対象外となります。成立すれば在学中の学生を含めて41万人が対象に加わる見込みで、新たに2,600億円が必要となります。
年間の支援の上限額は、授業料が国公立大で54万円、私立大で70万円です。入学金は国公立大で28万円、私立大で26万円です。本人への給付ではなく、国費などを財源として大学側が授業料や入学金を減免します。私立大の平均授業料は2023年度が約96万円で、20年間で約15万円上昇しています。日本は海外と比べ、高等教育費に占める家計の負担が重く、日本の家計負担の比率は51%で、OECD加盟国平均の19%の2倍を超えています。
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多子世帯への支援を重視した理由は少子化対策と進学機会の確保にあります。子どもが多い世帯ほど大学への進学を断念しやすい傾向もあります。文部科学省の2021年度の調査によれば、子どもが3人の世帯の進学希望率は71%で、2人の世帯よりも約9ポイント低率です。4人以上の世帯は62%で、さらに顕著になります。大学進学を諦める子どもを少しでも減らし、教育格差が生じるおを防ぐことが大切です。
(2025年2月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)