多死社会に向けての葬儀の担い手不足

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、国内の年間死亡数は2040年に166万5,000人でピークを迎えます。少子高齢化に伴う多死社会に向かう日本で、担い手不足による葬儀の遅れが出始めています。国内の年間死亡者数がピークに達する2040年ごろには、都市部の火葬待ちは2週間超が当たり前になりかねません。

 厚生労働省によれば、通夜や告別式を運営する葬儀師と、遺体の火葬や収骨を担う火葬係を合わせた有効求人倍率は2024年時点で7.6倍と、全産業平均の約5.6倍に達しています。従業員9人以下の事業所が7割を占めています。葬儀社は、夜中でも遺族からの電話に応え、遺体の引き取りや葬儀日程の相談に乗らなければなりません。深夜勤務の多さが若手の定着を阻んでいます。

 帝国データバンクによれば、2024年は葬儀社の倒産・休廃業・解散が52件となり、2000年以降最多となっています。今後難しいかじ取りを迫られるのは、パートを含む従業員が100人前後の中規模な事業者です。課題は人手不足だけではなく、少人数しか集まらない家族葬が増えたことで葬儀の単価が下がり、ビジネスを圧迫しています。

(2025年11月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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