感染症を防ぐワクチン接種は乳幼児向けと思いがちですが、大人が受けた方が良いワクチンがいくつかあります。65歳以上の場合、インフルエンザワクチンは法律が定める定期接種の対象であり、費用が助成されることもあります。肺炎球菌ワクチンは、現在、65歳以上で年度中に65歳、70歳、75歳など5歳刻みの対象年齢になる人(100歳まで)は定期接種になります。妊娠を希望する人とその家族は、風疹ワクチンを受けておくべきです。妊娠初期の女性が感染すると、生まれてくる子どもの耳が聞こえにくい、目が見えにくいといった先天性風疹症候群になります。かつて女子中学生限定で接種を実施していた時期があり、1979年4月以前に生まれた男性は接種していない人が多くなっています。この世代は麻疹の接種率も同様に低いことから、一緒に予防できる混合(MR)ワクチンを接種すべきです。
おたふくかぜが原因で難聴(ムンプス難聴)になることがあります。任意接種のムンプスワクチンを受けていない人は、10代後半から増えています。ムンプスや風疹、麻疹のワクチンは2回接種で効果が高まるので、未接種の人はもちろん、1回受けた人も接種したほうが良いと考えられています。水痘(水ぼうそう)ワクチンも子育て世代が受けた方が良いワクチンです。大人が感染すると重症化しやすく、肺炎や脳炎などを合併することもあります。50歳以上の人にも水痘ワクチンは有効です。子ども時代に水ぼうそうにかかると、免疫はできますが、ウイルスが脳や脊髄に潜んだままになります。加齢に伴い水痘に対する抗体が減ると、過労などで帯状疱疹を引き起こします。
(2017年11月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)